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26 お姉ちゃん

Author: 栗栖蛍
last update Last Updated: 2025-06-07 08:16:37

「咲ちゃん、駄目よ」

 家の玄関を飛び出そうとした咲の腕を掴んだのは、ちょうど帰宅した姉の凜だ。

 広井町の職場へ電車で通う彼女は、予定のない日はほぼ同じ時刻に帰ってくる。

「いや、ちょっと田中の店に行って来るだけだから」

「ちょっと、って。外に出たら誰が見てるか分からないじゃない」

「こんな時間に出歩いてるのなんて、近所の人くらいだろ? すぐそこなんだから」

「ご近所にだってそんな姿見せられないわよ」

 興奮気味に振り切ろうとする妹のボサボサ髪に向かって、凜は「駄目よ」と注意した。

「えぇぇ、お店閉まっちゃうってば」

 田中商店の閉店時間は夜の七時だ。外はもう薄暗く、今から走ってもギリギリだろう。

「何か欲しいものがあるなら、私が行くわよ?」

「そうじゃなくて、絢さんに用があるんだよ」

「なら閉店してからでも構わないじゃない。あそこは彼女の家なんだから」

 凜は「急いでるなら早く」と強引に咲のサンダルを脱がせ、自室へと連行した。

 咲の衝動を煽ったのは、父親とのちょっとした会話だ。昨日、智たちが修行している山へ入った事を何気なく話した所で、地元で不動産業を営む父親が気になる情報をくれたのだ。

 風呂上がりの濡れた髪をタオルでぐしゃぐしゃっと拭いて、適当なワンピース姿で駆け出した所を、この世界で唯一の姉妹である姉に捕まった。

 町で衣料系のメーカーに勤める五歳年上の凜は、昔から咲のお洒落にはうるさい。『女の子は女の子らしく。女の武器は最大限に活用する! 女の子を楽しまなきゃ』が彼女のモットーだ。

 中身が異世界男子という正体を知らぬまま咲の外見を女らしく仕上げたのは、彼女の功績だろう。

「絢さん居なくなってたら、アネキのせいだからな!」

 頭のてっぺんから爪先まで隙なく手入れされた凜に悪足掻きしながら、咲はとりあえず彼女に従った。物心ついてから、この関係は変わりない。

 それまでずっと兄だった自分が、突然できた姉の存在に居心地の良さを感じている。

「もう、その乱暴な喋り方もどうにかならないの? そんなだから可愛いのに恋人の一人もできないのよ」

「できないんじゃなくて、作ってないだけですぅ! 勘違いしないで!」

 鏡の前でドライヤーを片手に、凜は咲の髪を整えていく。

「生意気なこと言って、ストーカーに狙われないようにね」

「そんな奴がいたら、股間に一発蹴り入れてやる
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